#216
【読書】海女の群像 岩瀬禎之写真集
岩瀬 禎之 彩流社
半世紀以上前に撮影された、海女さんたちの姿。
大勢の海女さんが海辺でパンツ一枚で働く姿を捉えており、今ではもう見られなくなった光景を収めた歴史的史料としても貴重な記録だと思われますが、岩瀬さんはこれらの海女さんを芸術的な視点で撮影してます。
すごい迫力。
胸をあらわにしながらも海辺で仕事に勤しむその姿は本当に自然で美しいのですが、それだけではなく、皆で協力して舟を上げる姿は男顔負けなくらいたくましく、また、束の間の休息で子どもにお乳をあげる母の顔、女性どうしでおしゃべりに興じる少女らしい顔など、若い女性からおばあちゃんまで、人間の体というのはこんなに表情豊かなのかと思うくらい、その全身で様々な表情を見せます。
この写真をヌード写真の一種と見ることもできますが、それよりも、労働で培われた女性の体の美しさをダイレクトに捉えたポートレートと言ったらよいか。
海女という職業は過酷な労働であったろうことは想像に難くないのですが、それを通り越した海女さんたち同士の絆や、今は忘れられてしまった人の本来の姿が写し出されているような感じがして、岩瀬さんが写したものは、もう今ではあまり見ることが出来なくなった、人間の美しさの一面だったように思います。
2013-2-18
カテゴリー:写真集/日本の文化と歴史