#290
原発ホワイトアウト
若杉 冽 講談社 (2013)
職場の同僚に勧められ、貸してもらって読みましたが、この本は今売れているようですね。
ストーリーのモデルは言うまでもなく、福島第一原発事故。
原発事故後の政府、国、電力会社、原発に関連する各機関、の事故への対応の様子に平行して、その裏側で繰り広げられる、日本中からあがった反原発の声の沈静化と原子力の維持のために奔走する議員・官僚・電力原子力関係者の姿が描かれています。
読み進めていくと、過去に読んだ原発事故関連の新聞や雑誌の記事、原発問題について探った様々なブログの文面が、頭の中に次々と現れては消え、現れては消えしました。
著者の若杉さん、現役の霞ヶ関官僚だそうで(当然仮名です)、細かいところは脚色されていますが、実質告発本といっていいものです。
私は普段からこんな情報ばかり仕入れてますので(・・・)、ああやっぱりそうなのか、という感じで読んでいましたが、新聞やテレビでしか原発事故のニュースに触れていない方は仰天し、あまりの酷さに怒りがわき起こるかもしれません。
最後の章は全くの架空のストーリーですが、少なからず可能性のあるケースで、警告の意味もあるのでしょう。こんなことにならないよう、願うばかりです。
そして、被災者を救おうともせず原子力の維持に固執する国の、官僚たちの中に、今回の原発事故への今の対応に異議を唱える官僚も多くいるらしいとは聞いたことがありましたが、この本でそんな内実の告発という英断をした心ある現役官僚の方に、この本で触れることができた、というのが何よりも新鮮でありました。
(と書いていましたら、官庁では犯人探しが始まっているらしいとのネットのニュースが。若杉さん、応援したいと思います。)
2013-11-2
カテゴリー:原爆・原発・原子力/小説