#348
ジョディ、傷つけられた子 里親キャシー・グラスの手記
キャシー・グラス 塩川 亜咲子 中央公論新社 (2013)
8歳という小さな女の子が、これほどまでに辛い思いをなぜしなければならないのか。
この言葉しかすぐには出てこないほどに、衝撃的な内容でした。
何人もの里子を育てた経験のあるベテランの里親キャシーさんが里子「ジョディ」との暮らしを綴った手記です。
キャシーさんが引き取ってくれなかったら養護施設に入れるしかないとまで言われた問題児「ジョディ」ですが、一緒に暮らすうちに、ジョディとの会話の中から、彼女が以前実の父から日常的に性的虐待を受けていたことに気づきます。
キャシーさんより前にジョディを引き取った里親たちさえもそのことに気づかず、さらに、里子を委託する里親委託協会でさえも分からなかった事実。
この本ではジョディが受けた虐待について生々しく描かれており、想像を絶するほど。
しかし、この本が伝えようとしているのはそのような虐待の実態やそれにより傷ついた子どもの姿ももちろんですが、このような子どもたちへの社会的対応にどのような欠陥があるのか、そして何よりも、養育がとても困難な子どもに里親としてどう接していったか、そして子どもがどう変わっていったか、にあると思います。
ジョディのありのままを受け止めようとし、そして少しづつですがキャシーさんに心を開いてゆくジョディ。
時には挫折しそうになりながらも、ジョディがどんな行動を起こしてもジョディに寄り添おうとするキャシーさんの姿がそこにはあり、大きな問題を抱えた子どもでも少しづつでも確かに立ち直ってゆくのだという希望を感じます。
2014-11-7
カテゴリー:暮らしと子育て/福祉
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