ツブヤキ #207
「ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール」というスチュアート・マードックの愛おしい世界
2016-2-28
20年ほど前。
たまたま千葉パルコのタワーレコードに立ち寄った時に店内で流れていたある曲にハマりました。
それが、ベル・アンド・セバスチャンという英国のバンドの2ndアルバム(1000枚限定で発売されていた彼らの1stアルバムがその後再発されたので、これは実質3rdアルバム)「ザ・ボーイ・ウィズ・ザ・アラブ・ストラップ」に収められている「ダーティ・ドリーム・No.2」という曲でした。
CDを買って、毎日聴き込みました。
それ以来、彼らのファンになりました。
「ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール」というタイトルの映画が日本で公開されることを知ったのが昨年の夏。
もしや、と思っていたら案の定、その映画はベル・アンド・セバスチャンのフロントマン、スチュアート・マードック氏によるものでした。
スチュアート・マードックは2009年に、同名のアルバムを出していたのです。
ベル・アンド・セバスチャンとしてではなく、スチュアート・マードックのソロ・プロジェクトとして。
ツアー中に書き溜めていた曲が、自分たちが歌うより女の子が歌うのにふさわしいと思ったそうで、プロジェクトではオーディションで選んだボーカルの女性たちが歌いました。
元気な女の子たちの歌声が気持ち良く、BGMにもちょうどいいので私が何回も聞き込んだアルバム。
映画は日本では昨年夏に公開されたそうですが、ようやく宮崎でも上映されました。
イヴというメンタルの面で病をかかえていた女の子が、入院していた施設を抜け出し、とあるバンドのライヴに出かける。
演奏中、バンドメンバーのドラマーとケンカをはじめた、ひ弱そうなボーカルの男の子ジェームズ。
何となくジェームズが気になっていたイヴはある日、ジェームズが監視員をしているプールに足を運び、ジェームズに会う。
そのうちイヴはジェームズが住んでいるアパートに移り住むことに。
イヴに頼まれ、イヴの友人キャシーに歌詞づくりを教え始めるが、そのうち3人でバンドを組むことに・・・
そうかあ、アルバム「ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール」の世界が、映画という形になったんだなあ。
これまでベル・アンド・セバスチャンが世に送り込んだ音楽の世界の結晶にも見えました。
ポップで、親しみやすくて、甘酸っぱくて、そしてちょっと毒がある。
ところどころで主人公たちが音楽に合わせて踊ったりするシーンがあり、ミュージカルを思わせますが、長大なプロモーションビデオのようでもありました。
冴えなかった主人公たちが、どんどんあか抜けていく。
ちょっと気恥ずかしく、そして愛らしい。
そして何といっても、かっこいい。
会話に飛び出す80年代ニューウェイヴのミュージシャンたち、レコードやカセットとスマートフォンという70〜80年代と現代のクロスオーバー。
心がキュッとし、見終わった後も映画の中の様々なシーンがずっと思い出されました。
私が久しぶりに出会った、「また見たい!」と思える愛おしい映画。
同名の映画のサントラ盤も気になって聴いてみましたが、オリジナルの「ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール」に比べて元気でにぎやかな感じかな。聴き比べるのもいいかも。
関連サイト
・ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール 公式ウェブサイト
カテゴリー:フィルム