#167
お父さんにこそ見てほしい 映画「小さき声のカノン」
2015-5-16
福島第一原発事故による放射能汚染。
それは福島県内のみならず、関東地方にまで広がりました。
住まいが避難区域になり未だに我が家へ戻れない方々もいらっしゃいますが、生活している地域が放射能汚染しても多くの方はそのまま住み続けている他、一時的に自主避難しその後戻った人、自主避難したまま移住した人、長く考えた末にようやく自主避難や移住を実行した人、特に避難もせずそのまま住み続けている人・・・さまざまな方がいます。
我が家も福島から遠く離れた埼玉で暮らしていましたが、原発事故前から原発に疑問を持っていたことから事故後の妻の行動は早く、約1週間で娘とともに妻の故郷である宮崎に移りました。私は様子見しつつ当時娘が里子であったことや仕事をどうしようかと考えていたこともあり3年を待って宮崎に合流しました。
映画のタイトルにもある「選択する人々」・・・そう、我が家は埼玉から宮崎に移住するという選択をしましたが、福島に住み続ける選択をした人たちの気持ちというのは・・・それが知りたいと思い、観てみました。
映画では、二つの場所の「お母さん」たちを取り上げ、それぞれの「選択」についての思い、行動を紹介してくれます。
一つの舞台は福島県二本松市にある保育園。
そこに通う子どもたちを持つお母さんたちの、子どもへの思い。
放射能の子どもへの影響は大人よりも高いと言われます。
お母さんたちへのインタビューで、それぞれの事情があり、考えに考えた末に苦渋の選択として「住み続けること」を選んだことが語られます。
お母さんたちにインタビューすると、最初は明るく語るのですが、そのうち涙声になってくるのです・・・そう、みんな。
子どもを連れて、遠くに避難したい。子どものために。でもそれができない。家、地域、役割、つながり・・・
みんな、真剣に考えているのです。
でもお母さんたちは強い。「ハハレンジャー」なるチーム結成し、子どもを守るために、そこに住み続けながら「最大限出来ること」を探し、実行してゆきます。
食べ物はなるべく放射能汚染の無いものを選ぶ。子どもたちが集まるところだけでなく、寄り道して遊びそうなところも、除染する。そして、長い休み中に放射能汚染の無い遠いところで子どもを「保養」させる。
もう一つの舞台は、27年前にチェルノブイリ原発事故により放射能汚染したベラルーシのゴメリ。
ゴメリの人たちは語ります。
原発事故直後、政府はどのような行動をとったか、自分たちはどのような生活をしたか。
そして(もう福島よりも線量が低いけれども)暮らす人々の体にどのようなことが起きているか。
頭痛、体の痛み、疲れやすさ、生育不良、がん・・・
ゴメリで暮らす人々が語る原発事故直後の話は、今の福島の状況と重なります。
そして今の福島に住む人々の27年後の姿は、今ゴメリに住む人々の姿なのだろうか・・・と想像してしまいます。
でも、ゴメリの人たちも、自分たちの選択としてそこに留まり、お母さんたちは自分たちで最大限できることをしました。
今でも、食材は放射能測定をしたり、子どもたちを保養に出したり・・・
避難しない人たちは、しなくていいと思っているわけではなく、それぞれの事情がある。(もちろん、しなくていいと思っている人も多いと思いますが)そして決して子どもをおざなりにしているわけではないし、考えに考えた末の選択であること。
他の人たちはそのことを受け止めることが望ましい。
だから、それぞれの人たちの状況に合わせて皆で支援をしていくべきなのだと思いました。
放射能から我が子を守るため、みんな一生懸命。出ていった人も、留まった人も。
それにしても国の無策ぶりが際立ちますね。ため息が出ます。
お母さんだけでなくお父さんにこそ、見て欲しい映画です。なぜなら、子どもを守るためには、お父さんの理解があったほうが、きっとより良い状況を作り出すことができるから。(霞ヶ関にお勤めのお父さんたち!特にあなたたちですよ。)
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平日ですがレディースデーで女性は割引なので妻と観に行きました。
私たちの他にお客はおらず、貸し切り状態。
私も平日に時々観に行きますが、他にお客がいないのは初めて。
どうしちゃったのかしら。
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<関連記事>
・逃げられるか 戻れるか
・これから進めるべき放射能汚染地域の子どもたちの保養
・「とにかく子どもたちを守れ」という先生たち
・映画「核の傷:肥田舜太郎医師と内部被曝」から見えたもの
・子どもと放射線
<関連サイト>
・食品と暮らしの安全・ウクライナ調査
チェルノブイリ原発事故により被災した人たちの健康状況を調査、食べ物によって改善する試みをレポートしています。
・チェルノブイリへのかけはし
チェルノブイリ原発事故直後から被災した子どもたちへの支援をしています。一部映画の中にその活動状況が取り上げられています。
カテゴリー:フィルム/原発